【新唐人2015年06月12日】6月1日に長江で起きた客船転覆事故では、乗客乗員456人のうち、400人以上が死亡しました。救出された生存者は2人にとどまりましたが、大陸メディアは当局の救助活動を絶賛するばかりで、事故の責任を追究していません。「救助隊員が主役となり、犠牲者が脇役になった」として、中国人の怒りを買っています。
6月1日に客船転覆事故が発生すると、その翌日、当局は、各メディアに対して独自取材を禁じました。ニュースの素材は新華社あるいは中央テレビのものに限られ、事故が起きた地元メディアさえ、現場での取材が許されませんでした。
6月5日から、大陸メディアには当局の救助活動を絶賛する記事が大量に現れ始めました。そのタイトルをご紹介しましょう。
例えば、「中国人に生まれて、なんと幸せなことか」、「痛ましい水域を幾度も泳いでくれて感謝する」、「4日3晩、私たちを感動させた瞬間」。
あるいは「世界は事故を通じて中国の決心を見た」、「歴史に残る救援の10個のシーン」。
さらに「子供よ、泣かないで。私は長江にいる。すでに母の懐に戻った」、「救援の第一線、中国一のイケメンはここにいる」などです。
李立君(り りつくん)という南方都市報の記者は、それらのタイトルについて、「あなたたちと同業者だということに恥を覚える」とコメントしました。
北京のメディア研究者、喬木(きょう ぼく)さんは、「子供よ、泣かないで。私は長江にいる。すでに母の懐に戻った」のタイトルについて、「誰がこんな形で母親の懐に戻りたいのか。家族を失った人の気持ちを考慮しているのか」と問いかけました。
雑誌「百姓」 黄良天・元編集長
「これが中国共産党の伝統です。災難が起こると悲劇を喜劇にします。中共は天災・人災が起きるたびにその機会を利用して、統治の合法性を証明しようとします。『自分は偉大で、誉れがあり正しい』と。我々にとっては珍しくありません。官製メディアの常套手段です」
メディア関係者だけでなく、ネット民からも非難の声が上がっています。
寧波市のネット民 周周煮粥さん
「記事を書いた人やメディアには良心がありません。『心温まる話』で事件の本質から目をそらすように仕向けています。そのうえ、政府を絶賛するなど、恥知らずにも程があります」
今回の事故から思い出されるのが、去年の4月に起きた韓国船の沈没事故です。
中国民主活動家 王愛忠さん
「韓国の事故では、首相が責任を取って辞任しました。船会社、船員、船長などが調査を受けて、100人以上が逮捕されました。しかし中国の事故では、当局は自然災害だと言うだけで、船会社の安全管理や事故発生時の船の操作記録など、社会に対して説明していません。そのほか韓国では、140人以上が救助されました。中国は川で起きた事故なのに、生存者はわずか14人です」
事故発生時、韓国船には476人が、中国船には456人が乗っていました。いずれも同じように船が完全に転覆し、船長が真っ先に脱出したため、すぐに事故が通報されず、救助が遅れました。しかし、制度が異なる両国では、生存者の数に大きな違いが出たほか、当局の処理方法、メディアの報道、市民の反応などもまったく異なっています。
新唐人テレビがお伝えしました。
http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2015/06/09/a1202326.html(中国語)
(翻訳/河合 ナレーター/水田 映像編集/李)